​解 説

本作は、GEN TAKAHASHIが2018年から開始した新しい試みiPhone FILMiC Pro プロジェクトの最新作である。機材はiPhone1台と三脚以外に一切使用せず、撮影、美術、編集をすべて監督ひとりで製作。

俳優全員がオーディションによるノーギャラ出演で主演・川本淳市も自費で台湾ロケに参加した100%の自主映画で、2021年モントリオール・インディペンデント映画祭オフィシャルセレクション作品である。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は、高橋玄監督作『CHARON(カロン)』(2005年/ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ファンタランド大賞受賞/マンハイム=ハイデルベルグ国際映画祭/ドゥービル・アジア映画祭)の17年後という設定を背景にした事実上の続編となっている。
『CHARON(カロン)』では詳細が描かれなかった主人公・示現道男(川本淳市)の所属組織が、実在する世界最大の秘密結社・青幇(チンパン)であることが語られる。

 

紀元前の時代から中国に原型が存在した「幇(パン)」とは、17世紀から20世紀初頭にかけての清皇帝の圧政に反逆した庶民の革命組織であり相互扶助を活動主旨とする台湾に本拠を置く秘密結社である。

幇は、商業活動や政治を含めた社会活動にも旺盛な洪門(ホンメン)と、完全な秘密性を堅持する青幇(チンパン)という大きな2派にわかれているが、両方の組織体系全体も、また相互扶助関係にある。そのため、両方の組織に属するメンバーも少なくない。ただし、先に洪門(ホンメン)に入門した者は、その後に青幇(チンパン)に入門できないことからも青幇(チンパン)はより厳密な入門資格が問われる(青幇から洪門への二重在籍は認められている)。

洪門(ホンメン)はアジア圏を中心に全世界で600万人を超える会員を擁する世界最大の秘密結社である(青幇は約300万人)。

幇の最上位組織となる青幇(チンパン)は、組織体系と構成員が外部には完全に秘匿されており、その実態については中国、台湾、日本の公安警察はおろか英国MI6、米国CIAほか主要国の諜報機関でさえも把握できていない。

実態が知られていないため、特にフィクションの世界では、幇が欧米のマフィアに同類の犯罪組織として描かれることが多いが、それは誤りである。幇は主に華僑社会の国際的なネットワークによる相互扶助組織であり、ギャングや暴力団ではない。ただし、反国家権力の歴史を継承してきた秘密結社であるため、有事の際に非合法活動も辞さない実力部隊を擁している。

インターネットで散見されるこの組織に関する情報はすべて誤りである。青幇(チンパン)が犯罪組織であり現在は消滅した存在であるとの記述も見られるが、青幇は現時点でも世界300万人以上の会員がおり、極めて少数だが日本にも実在する。

 

本作は、25年以上にわたってアジアの幇を取材し、交流してきたGEN TAKAHASHI監督が、誇張したストーリーではない現実の青幇(チンパン)の日常的な活動の一端を、世界で初めて映画で描いた異色作であり、実在する台湾の青幇(チンパン)のトップクラスのメンバーたちも出演している。

ストーリー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京新宿のライブハウス・バーは、台湾に本拠を置く世界最大の秘密結社・青幇(チンパン)の日本のアジトだった。組織の幹部・示現道男は、同じく組織の一員である海野弁護士から、警視庁外事課警部補・有働が組織のメンバーを探っているとの報告を受ける。だが米国CIAでさえ青幇の存在と実態を知る人間はいない。裏切り者が情報を売り渡したのだ。

 同じ頃、自称ジャーナリストのマイク渡辺は、以前面識があった佐藤久美と再会し酒席を共にする。久美は有働警部補の年若い愛人でDVを受けているという。そして渡辺の同窓生だった海野弁護士が久美の相談を受けたことから、日本と台湾の「名もなき絆」で結ばれた組織が、誰も知らない水面下で久美の救済に動き出す。

(上映時間 55分/HD/2.39:1/ステレオ/2021年)

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